絵本庭訓往来 六月返

絵本庭訓往来 | 往来物・和算書 | 国立教育政策研究所教育図書館貴重資料デジタルコレクション

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只今ただいまほつする すゝめんと 使者ししやを 之處のところ遮而さへぎつてあづかり 音信ゐんしんに 之条 のでう。
相叶本望者也あいかなうほんもうにものなり殊以喜悦ことにもつてきゑつに 抑戦場 そも〳〵せんじやう。御進ごしん
發之事 はつのこと。夜前始所奉也やぜんはしめてところたてまつるなり綸旨りんし院宣ゐんぜんハたい
底規式ていぎしき令旨官 れいしくわん。府宣者ふせんハ
あらず 今指南いましなんに 大將軍 たいしやうぐん。副將ふくせう
軍御教書 ぐんみぎやうしよ。傍軰軍勢はうばいぐんぜい
催促さいそくあらざる 信用之限しんやうのかぎり 也 なり。將軍しやうぐん
家 けの。御教書 みげうしよ。執事 しつじ。施行せぎやう
侍所奉書者さむらいとごろほうしよハ規模也きぼなりかつハ
嘉例かれい且先規也かつハせんきなりべし さる まう
沙汰さたをいて 反逆軰ほんぎやくのともからに 者 ハ。ために
後昆 こうこんの。 のこさ 与同張本よとうちやうほん
之族のやからをられ ちう これを。いたつて 強竊がうせつ
黨類者 とうるいにハ。たづね 捜同意贔さぐつてどういひい
屓之徒黨 きのとたうを。べき 搦捕からめとら
也 なり。凡生虜分取者 およそいけどりぶんどりハ。軍忠ぐんちうの
専一せんいち軍旅之高名也 ぐんりよのかうミやうなり。
能々可致用意也 よく〳〵べきるようゐせらなり。つぎに
武具事 ぶぐのこと。いへども 見苦敷候ミぐるしくさふらふと
紫糸むらさきいと萌黄糸綴もへぎいとをどしうの
花威はなおどし黒糸之鎧 くろいとのよろひ。赤革 あかかは。
黄糸腹巻 きいとのはらまき。唐綾 からあや。小桜 こざくら。
黒革威 くろかハをどし。大荒目筒丸 おほあらめのどうまる。
捃縄目紺絲綴 ふしなハめのこんいとをどし。腹當星はらあてほし
白龍頭 じろのたつがしら。四方白甲 しはうじろのかぶと。各一刎 をの〳〵ひとはね。同毛袖 をなじいろのそで。并手ならびにて
蓋 をほひ。䯛当 すねあて。半首 はつぶり。涎懸 よだれかけ。鍍袴 くさりばかま。逆頬箙 さかつらゑびら。
胡籙 やなぐひ。石打征矢 いしうちのそや。筋切府 すじのきりふ。妻黒箟矢 つまぐろののや。
鵠鵇羽 くゞゐとうのは。鶴本白等 つるのもとじろとう。尻籠 しこ。
鷹羽 たかのは。厂俣 かりまた。鷲羽鋒矢 わしのはのとがりや。
をの〳〵あい ぐす腰當こしあて弓者本重ゆミハもとしげ
藤塗籠 だうのぬりごめ。糸褁等也 いとつゝミとうなり。くわへ つる
まきを 候畢 さふらひをハんぬ。太刀者 たちハ。兵庫鏁ひやうごくさり
鳥頸 とりくび。皆彫物 ミなほりもの。粢鍔 しとぎつば。ならびに
金作左右巻 こかねつくりのさやまき。白柄長刀 しらえのなぎなた
同手鉾 をなじくてほこ。馬者連銭葦むまハれんせんあし
毛 げ。柑子栗毛 かうじくりげ。烏黒 からすぐろ。ひばり
毛 げ。黒鵤毛 くろつきげ。糟毛 かすげ。鹿毛かげ。
河原毛 かハらげ。青鵲 あをさぎ。髪白 ひたいしろ。つき
額 ひたい。葦毛 あしげ。駮 ぶち。雪踏等 よつじろとう。ミな
あひ そへ舎人飼口とねりかいくちを 金輻輪きんふくりんの
螺鞍 かいくら。白橋 しらほね。黒漆張鞍 くろぬりのはりくら。
料鞍橋 れうのくらぼね。金地鎧 かねぢのあぶミ。しら
磨轡 ミがきのくつハ。大形鞦 をほふさのしりがひ。細筋ほそすじの
手綱 たづな。腹帯 はらをび。豹皮へうのかハ
麞鞍覆 くじかのくらをほひ。虎皮 とらのかハ。鹿かの
子切付 このきつつけ。水豹熊皮ざらしくまのかハの
泥障 あをり。鞭差 むちさし。縄等 なハとう。ために
御餞をんはなむけの たてまつる をくり 之 これを。ひやう
粮八木 らうはちぼく。鞍替糒袋 くらがへのほしいひふくろ。
行器野宿之料 ほかいのじゆくのれうに。雨皮あまかハ
敷皮油単等 しきかハゆたんとうの。雑具 ぞうぐ。こゝろ
ところ 及 をよぶ。ほん そうすこれを兼又 かねてハまた。
さだめてるゝ 存知ぞんぢら 欤 か。然而先しかふしてさき
懸 がけ。分捕者武士名誉 ぶんどりハぶしのめいよ。
夜詰後詰者 よづめごづめハ。陣旅ぢんりよ
之軍致也 のぐんちなり。すて 一命いちめいを つくさ 粉骨ふんこつを 者 バ。のせて
證判状しやうばんのじやうにべき そなへら 後胤亀鏡こうゐんのきけいに 也 なり。猶心所なをこゝろのところ
及 をよぶ。べき たづね しんず尋常具足じんじやうのぐそくを 之處 のところに。境節所々をりふししよ〳〵の
忩劇そうげき大略たいりやく此式候也 このしきにさふらふなり。しよ
事 じ。ごし 御帰宅之時ごきたくのときを さふらふ
恐々謹言きやう〳〵きんげん。
 六月十一日  兵部丞ひやうぶのぜう丹治たんぢ
謹上きんじやう 勘解由次官かげゆのじくわん殿どの 御報ごほう