絵本庭訓往来 八月単

絵本庭訓往来 | 往来物・和算書 | 国立教育政策研究所教育図書館貴重資料デジタルコレクション

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去比さんぬるころあづかり 御札ぎよさつに 候之處 さふらふのところ。他行之間 たぎやうのあいだ。すなハち もふさ 御返をんへん
じを 候之条 さふらふのでう。うしなひ 本意ほんゐを 畢 をハんぬ。そも〳〵將軍家しやうぐんけ若宮わかミや
御参詣事 ごさんけいのこと。供奉日記 ぐぶのにつき。 しやく ようせら有方あるかたに 候 さふらふ。
日態 にちにわさと。べき しんず也 なり。其躰そのていほとんどしめ てう くハせ関東鶴岡くハんとうつるがをか
八幡宮参詣はちまんぐうのさんけいに 候畢 さふらひをハんぬ。路次者ろしハ八葉御車はちようのをんくるま後車ごしやの
公卿一人くぎやういちにん騎馬殿上人きばてんじやうびと前駈北面等 せんくほくめんとう。美々敷びゞしく
綺羅 きら。耀かゝやき てんに陣頭ぢんとうちらす
花 はなを。狩衣かりぎぬ水旱 すいかん。供奉ぐぶの
人浄衣ひとハしやうゑ白直垂 しろきひたゝれ。布衣ふいの
景勢 けいせい。衣文 ゑもん。はらい 當 あたりを。ぎやう
さうをどろかす 目 めを。家紋當色等 かもんのたうしよくとう。
色々狂文 いろ〳〵のきやうもん。つくし 色節しきせつをちりぞめ きん
ぎんををよそ いたるまで 中間ちうげん雜色さうしき
牛飼等りうしかいとうにをり はなをまじへ 色 いろを。づく
なかん後陣武士ごぢんのぶし警固勇けいごのゆう
士也 しなり。色々甲冑 いろ〳〵のかつちう。思々鎧をもい〳〵のよろひ
直垂 ひたゝれ。馬鞍むまくらゆミ箙 やなぐゐ。ちやくし
重代重宝ぢうたいのてうほうをもちひ しん
調之美麗てうのびれいをより 門前もんぜん
前後之隨兵 ぜんごのずいひやう。つがい 上下じやうげに
左右刀帯 さゆふのたてわき。つらなり 二行にきやうに御帯をんたて
刀役人ハきのやくにん御調度懸人 ミてうどかけのひと あひ
ならんで弓手妻手ゆんであてに
しゆうすこれを御迎伶人者 をんむかひのれいじんハ。調とゝのへ
楽妓かくきをひるがへす 羅綾之袂られうのたもとを
陣頭ぢんとうに御前之舞人者 ごぜんのまいびとハ。
うつて 鞵鞻けいろうをそバだつ 舞行之踵ぶかうのくびすを
庭上ていしやうに袮宜ねぎ神主者 かんぬしハ。さゝげ 幣帛へいはくを をほ
ゆかに別當べつたう社僧者 しやそうハ。とく 經紐於玉甍きやうのひもをたまのいらかに巫八かんなぎ
乙女者 をとめハ。ひいて 裙帯くんたいを まひ あそび透廊すきらうに職掌しよくしようの
神乐男者 かぐらをとこハ。あハせて 調拍子どひやうしを かうす拝殿はいでんに加之しかのミならず
臨時陪従りんじのばいしやう當座神乐 たうざのかぐら。朝倉返詠物あさくらがへしうたひもの
調とゝのへ 拍子本末ひやうしのほんまつをかへりなひ 礼奠れいてんに いたす 如在之儀しよさいのぎを神感之しんかんの
かう厳重之態げんぢうのわざ誠以掲焉也 まことにもつてけつえんなり。耳目所じもくのところ
をよぶ。 いとまあら 禿筆とつひつにたゞあふぐ 高察かうさつを 而已 のミ。謹言きんげん
 八月十三日  左衛門尉さゑもんのぜう
謹上きんじやう 大内記だいないき殿どの