絵本庭訓往来 十二月返

絵本庭訓往来 | 往来物・和算書 | 国立教育政策研究所教育図書館貴重資料デジタルコレクション
https://kakasi.skr.jp/images/teikin/K081-3_089.jpg


御消息ごしやうそくたちまち披閲ひゑつ珎重々々ちんてう〳〵はなハだことし うるが
玉珠ぎよくしゆを あらずん 参拝さんはいに かたし しやし これをそも〳〵りやう
遠之国ゑんのくにたやすくよつて がたきに つうじ 音信いんしんを ながら おもひはす かう
ゐんを 遺恨深重也いこんしんちやうなりいづれ
ときかしやせん これをすなハちべき けいす 案内あんないヲ
之處のところ路次疲労ろじのひらうてう
途之窮屈どのきうくつ只忙然たゞほうぜん
之外のほかなし よつて 恩問おんもんに
ところ るゝの おどろかさなり入境着任じゆきやうちやくにんの
規式ぎしき着府吏務法ちやくふりむのほう
なし 殊子細のこるしさい 在廳人等ざいちやうにんとう日並出仕ひなミのしゆつしこう
例奉行れいぶげうなし 等閑とうかん 椀飯わうばん盛物もりもの積物つミもの以下いげつくし
時節景物じせつのけいふつを 雑事厨ざうじくりや調とゝのへ 種々美物しゆ〳〵のびもつを ちう
庭経営ていのけいゑい留守所結構るすところのけつかう
ことし なすか いちを國遵行之くにのじゆんかうの
こと大介たいがい税所留記ぜいしよるき
文書もんじよ公文くもん田所結解たところけつげ
勘定かんでう書生しよせい判官代はんくハんだいの
勘文かんもん覆勘ふくかん郡司ぐんしごんの
守日記かミのにつき目録もくろく國宰小こくさいこ
目代催促もくだいのさいそく廻文くハいぶん下司けし公事引付くじひきつけ徴使てうし
給分きうぶん交分かうぶん充文あてぶミ名主ミやうしゆ百姓請取ひやくしやううけとり
返抄へんしやう臨時㸃役證跡りんじのてんやくせうせき御服貢絹ごふくのこうけん
調進てうしん準絹じゆんけん準布じゆんふ濟例さいれい別納べつなふ直進ぢきしん
請文うけぶミ租穀そこく租米送状そまいのをくりぜう納所卒法なつしよのそつはふ収納しゆなふ
徴納てうのう濟期さいご現物けんもつ色代償しきだいのつくのい来納過上らいのふくハぜうの
准據じゆんきよ旱水両損かんすいのりやうそん検田不熟けんでんのふじゆく損亡之勘そんばうのかん
ちう算用さんよう散失さんしつ都合つがう勘合かんかういさゝかなし 其煩そのわづらひ
しかのミならず諸社神拝しよしやのしんはい宮々奉弊ミや〳〵のほうへい寺社入堂じしやのにうだう節々せつ〳〵
法会はふゑ連々仏事れん〳〵のぶつじまもり せん
れいを なく 怠慢たいまん なり惣而そうじて
なふして 異儀黎民ゐぎのれいみん 納法之なつはうの
利潤莫太也りじゆんばくたいなりなふして なん
渋之郷保ぢうのけうほう 土貢之どかうの
現利げんり巨多也こたなりばん
まかせ 雅意がいに 一而ひとつとしてなし
違乱いらん 心事しんじいへども おほしと
がたし けくし 紙面しめんに しかしながらこす
後日ごにちを 恐惶謹言きやうくハうきんげん
     越前守ゑちぜんのかミ礒部いそべ
十二月三日
進上しんじやう 隼人佐はいとのすけ殿どの 御返事おんへんじ