絵本庭訓往来 八月返

絵本庭訓往来 | 往来物・和算書 | 国立教育政策研究所教育図書館貴重資料デジタルコレクション

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よつて なきに 指事させることつねに 申通もふしつうぜ
略之至りやくのいたり憚入候之處をどろきいりさふらふのところに芳問之ほうもんの
でう珎重々々 ちんてう〳〵。日来本望ひごろほんもふたちまち
以満足候畢 もつてまんぞくさふらひをハんぬ。庶幾そき何事如なにごとかしかん
之 これに。四海泰平しかいたいへい一天静謐いつてんせいひつの
事人々攘災所々幸祐也こと。ひと〴〵じやうさい。しよ〳〵のかうゆうなり。
御沙汰 ごさた。既厳密すでにげんミつにところ らるゝ しゆ
ぎやうせ 也 なり。さらにあらず 停滞豫儀之ていたいよぎの
政道せいどうに 訴訟若そしやうもしあら 悠々ゆう〳〵
緩怠之儀くハんたいのぎ 者 ば。御在洛之ございらくの
費也 ついゑなり。べし よう ゐせ活持くハつぢ
之計略のけいりやくまづられ しんぜ きよ
状代じやうたいを 者 バ。公所出仕こうしゆつし諸亭之しよていの
経廻けいくわいべき まふす 圖師つしを 也 なり。奉行人賄賂 ぶぎやうにんのわいろ。衆中属託 しゆぢうのぞくたく。上衆秘計じやうしゆひけい
口入くちいれ頭人内奏 たうにんないそう。贔屓 ひいき。うかゞひ 機嫌きけんを べし もふす これを讓状謀実ゆづりじやうのばうじつ
越境相論ゑつきやうのさうろん。いまだ…ず わかた 甲子次第かうをつのしだいを譜代相傅之重書等者 ふだいさうでんのぢうしよとうハ。
をいて 引付方ひきつけがたに べし 合 あハせら。御沙汰ごさた
頭人上衆とうにんのじやうしゆ闔閤 かいかう。右筆ゆふひつ
行人等 ぎやうにんとう。して 終日之御評定ひめもすごひやうじやう
いへども ありと 窮屈きうくつさらになく 御休ごきう
そく かん はんせこれをついて 問注もんぢう
所賦しよのくハりに[ 闔閤重かいかうハかさねて/ 賦也ふするなり] 執筆 しゆひつ。かき
あたゆる問状奉書於訴人もんじやうのはうしよをそにんに 之時のとき
をよんで 両度りやうどに無音者ぶいんせバをゝせて 使節しせつに くださ 召府めしふをついて 違背散状いはいのさんじやうに 者 ハ。ぢきに
ちせら于訴人そにんにしむる 召進めししんぜ 之時者 のときハ。 ふうじ くださ訴状そじやうをつがい 三問答之さんもんとうの
訴陳そぢんにをいて 御前ごぜんにとげ 對决たいけつをまかせ 雌雄是非しゆふのぜひに奉行人ぶぎやうにんしむる
しゆ しやせ事書ことがきををいて 引付ひきつけに うかゞひ 御評定異見ごひやうじやうのいけんをところ しむる 成敗せいはいせ 也 なり。
問注所者 もんぢうしよハ。永代沽券 ゑいたいうりけん。安堵年記 あんどのねんき。放券 はうけん。奴婢雜人ぬびざうにん
券契 けんけい。和与状 わよじやう。屓累證文等謀実 ぶるいしやうもんとうのばうしつ。きう めいすこれを管領寄人 くハんりやうのよりふと。
右筆奉行人等評判也 ゆふひつぶぎやうにんとうのひやうばんなり。奉行ぶぎやう
にん 差符方与奪さしふがたのよだつを 當参仁者 たうさんのじんハ。
なし 書下しよげを々國之時者 げこくのときハ。くだし 奉書ほうしよを而無しかふしてぶ
音之時ゐんのときくだし 使者召文しせつにめしふミを調とゝのへ 訴陳そぢんの
じやうをあい たいして當所執事 たうしよのしつじ。年々管ねん〳〵のくハん
領 れう。奉行人等ぶぎやうにんとうに べし いたし 問答もんだうを ろうす
たをついて 探題之異見たんだいのいけんにところ くハふる 下知げぢを 也 なり。
侍所者 さふらいところハ。謀叛むほん殺害 せつがい。さん
海両賊かいのりやうぞく強竊二盗 がうせつにとう。放火はうくハ
刃傷にんじやう打擲てうちやく蹂躙しうりん勾引かういん
次狼藉じのらうぜき闘諍とうじやう喧嘩等也 けんくわとうなり。
管領くハんれう執事しつじ奉行人ぶぎやうにん𢮦断けんだん
所司代のしよしだい。くバる 訴状於右そぜうをゆふ
ひつに 之時 のとき。もつて 小舎人或下部ことねりあるひハしもべ
とうを めし いだし犯人於侍所ぼんにんをさふらひところに ろくし申詞もふすことバ
よつて 言色躰嫌疑ことのしきていのけんぎにきう めいする犯否ほんひを
時 とき。所犯已しよほんすでになくん ところ のがるゝ者 バ。すなハちめし こめ
これを あるひハをよバし 推問すいもん拷問がうもん拷枠等がうじんとうにたづね
さぐりこれをたつね きハめ与同黨類等よとうだうるいとうをべき
断罪だんざい ハ。 ちうせら これをべき いましむものをバきん
ごくしこれを べき 流刑るけいす ものハ きせら 流帳るちやうに
此外火印追放以下 このほかくハゐんついほういげ。したがつて 事輕重其人是非ことのきやうぢうにそのひとのせひにべし
をこなハ 之 これを。次寺社訴訟者 つぎにじしやのそしやうハ。ついて 本所挙達ほんしよのきよだつに ひせら
これを越訴覆堪 をつそのふくかんハ。よつて 探題管領之予奪たんだいくハんれうのよだつに しゆ ぎやうせら
これをそうし 事庭中ことをていちうに家務かむ
恩賞方法規式 をんしやうがたのはうノぎしき。ざる べから あげて
かぞふ 也 なり。其旨趣 そのししゆ。つぶさにがたし つくし
帋上しじやうに御上洛之時 ごしやうらくのとき。心之こゝろところ
及 をよぶ。ほゞべく しむ もふさ候也 さうらふなり。恐々謹言きやう〳〵きんげん
 八月七日  散位さんゐ長谷部はせべ
謹上 きんじやう 大掾だいぜう殿どの