絵本庭訓往来 六月往

絵本庭訓往来 | 往来物・和算書 | 国立教育政策研究所教育図書館貴重資料デジタルコレクション

https://kakasi.skr.jp/images/teikin/K081-3_039.jpg

此間者 このあいだハ。よつて 連々物忩れん〳〵ぶつそうに たがいに。わする 密々之雜みつ〳〵のぞう 談 たんを。まことに
不慮之至也 ふりよのいたりなり。抑世上既属そも〳〵せじやうすでにぞくする 静謐せいひつに 之間のあいだ
ため 鵜鷹 うたか。逍遥しやうようのほつし くハだてんと 参入さんにうを 之處のところ謀叛 むほん。ほん
逆之凶徒 ぎやくのきやうと。めぐらし 籌策ちうさくをゐん ぞつし。盗賊狼狽之悪とうぞくらうぜきのあく
とうをせしめ ほう 國々くに〴〵 山賊さんぞく海賊 かいぞく。強竊 がうせつ。
盗徒黨たうのとたうせしめ 横行わうぎやう
所々しよ〳〵 うばい とり人之財産ひとのざいさんを つい
土民之住宅どみんのぢうたくを はぎ とる
旅人衣裳りよじんのいしやうを 之間 のあいだ。ため ちう
伐追討バつついたうの 大將軍たいしやうぐんよつて らるゝ
發向はつかうせ 方々ほう〴〵に 當家一たうけのいち
族 ぞく。おなじくはせ むかい彼戰場かのせんじやうに
きやくし 城槨じやうくハくを つい ばつしところの たて
籠之賊徒こもるのぞくとを べし 警固けいごす
要害ようがいを 云々うん〳〵よつて これに近日きんじつほつし
せしめんと 進發しんぱつ 之處 のところ。此間このあいだ
戦場 せんじやうに。武具 ぶぐ。乗馬已下のりむまいげ
つくし かずをうしない おはんぬ着弃きすての
よろひ宿直腹巻 とのゐのはらまき。ならびに
御乗換替等 おんのりがへとう。御助成ごじよせい 者 ハゞ。べく しかるなり今度こんとの
出立者 でたちハ。當家眉目とうけのびもく一門先途也 いちもんのせんどなり。もん
葉之人々やうのひと〴〵べき いたす 粉骨ふんこつ 之合戦令約諾のかつせんのせしめやくだく
もし存命仕ぞんめいつかまつり ハゞ再会さいくわい
之時のときべく 申入まうしいる 也 なり。づく なかん。しやう
軍家御教書 ぐんけのミぎやうしよ。厳密げんミつ
之上者 のうへハ。下給くだしたまハる 御縨おんほろ御旗おんはた
等之間とうのあいだ内戚 ないせき。外戚ぐハいせき。いち
族 ぞく。せしむる 一揆いつき 者也ものなりかつハより せん
功之忠否こうのちうひに 且随軍忠かつしたがいぐんちうの
浅深せんしんにほつす よくせんと 朝恩てうおんに 於譜代おゐてふだい
相傳之分領 さうでんのぶんれう。一所懸命之地いつしよけんめいのちに
ざる べから ある子細しさい 者哉ものをやよつて ざるに かへりミ
餘命よめいを のこさ 心底しんていを しかしながらあおく 御許ごきよ
ようを 恐々謹言きやう〳〵きんげん
六月七日ろくぐハつなぬか 勘解由次官かげゆのじくわん小野こまち
謹上きんじやう 後藤兵部丞ごとうひやうぶのぜう殿どの